先週からエクセルを使った作業をしている。シート数、テーブル数、数式数、どれもいつも取り扱っているものより多い。
以前は、更に「どうしてこんなわかりにくいネーミング?」と思うファイル名のブックが大量に存在し、それらが相互リンク貼りまくっているという、開けたと同時に閉じたくなる状態だった。
そりゃ、前任者が「リンクを追って対応して」というおざなりな引き継ぎをしちゃうわな、という代物。「こんな社会人が存在したんだ」と私を驚かせたのは、渡された電子フォルダの中身を見た時。
数十個のファイルが詰め込まれていて、どれが最終版か、どのファイルが必要でどのファイルが最終版には関係ないファイルなのかが全く分からない状態。
追い打ちをかける前任者のエクセレントな引き継ぎコメント:「プリントアウトしたデータがこれ。これと同じデータを持っているファイルが最終版だから。」1
最初は、こんなファイルたちと格闘させられた思い出話を綴ろうかと思っていたのだけど、同じような状況に打ちひしがれている人へ少しでもヒントになればと、私の体験談をここでシェアさせてもらうことにした。
まず、こんなゴミのようなファイルが作られた状況を分析し、どういった場合に遭遇する確率が高いか、どう対応するのがよいかを考えてみたい。
Contents
担当者が業務の全体像を把握できていない
アウトプットの期待度にもよるが、ある程度のクオリティまでであれば、業務の遂行能力と全体像の理解度は必ずしも対応しないようである。それが証拠に、私が引き継いだ電子ファイルやデータはごちゃごちゃであったにもかかわらず、当該業務は完遂されてきた。
担当者に対する周りの評価に左右されないように注意すること。
私はこれで結構自分を追い込んでしまい、「何で私は前任者が簡単にできてたことができないのだろう」と無駄に精神的ダメージを受けた。後述するが、単にその業務が属人化されていて、傍から見て「こんな複雑なことをやってのける○○さんはすごい」となっているだけ。全体像を把握せず、適当な対処療法で対応してきた結果、複雑になっているだけなので、後から綻びが出始めると、周囲の《有能な絶対的前任者信仰》は瓦解する。悩み無用。
見分け方は、引き継ぎの仕方。引き継ぎに時間を取らない、引継書を作っていない、ということがあれば、残念ながら、ビンゴ2。
どう向き合う?
前述したとおり、まず「前任者の評判をミュート」。次に、「前任者のマネをする」もしくは「全体像把握に全力を注ぐ」のいずれかを選択する。
前任者のマネをする
前任者のマインドセットを受け継いで、その場しのぎで、ちゃちゃっとタスクをこなす、というのもありなのかもしれないが、砂上の楼閣。また、今まで見過ごされてきたことに急にスポット・ライトが当てられる時代。「何でこんな杜撰な」と後から非難されないとも限らない3。
全体像把握に時間を割く
急がばまわれ。まずは、ファイルやシートの相関関係といったざっくりとしたことでいい。関連するファイル数・シート数、データ入手先(登場人物の把握)、リンク、これにプラスして、最終成果物に要求されていること、くらいをまとめておく。これくらいでいい。頑張ると反対に近視眼的になってしまい、元も子もない。
この作業でエクセルを使うと、かなりの確率でネ申エクセルと呼ばれるような表が作成されると思われる。(この段階では)はっきり言って無駄なので、ノートに手描きするか、パワポを使う方がいい。ただし、パワポの場合には、スタイルにこだわらないこと。
どこかのタイミングでエクセル知識に乏しい人が関与している
私を苦しめたデータはまさにコレ。なぜエクセル知識に乏しい人が関わると複雑化するのか、私のケースで説明する。
対処療法の副産物によって複雑化
ルール変更などを反映させてきたとはいえ、そもそも当該業務は複雑すぎというものではなかった。どうしてそう言い切れるのか。シートを分析したから。
シートや行列が非表示化されていてすぐには気づかなったのだけど、全部再表示させて、数式を追ったり、名前の一覧を見たりしている内に、どの部分が新しく作られた部分で、どの部分が元からあったものなのかがはっきりしてくる。
やや不親切な部分はあるものの、元々はシート構成などがしっかりと考えられていたようで、参照テーブルが一つのシートにまとめられ、それらのテーブル範囲にはふさわしい名前が付けられていた。
途中で、そんな作法を知らない人が業務を引き継いだのか、参照用のテーブルがいろんなシートに作られ、更にゾッとすることに複製されていたりもした。全体像を把握できていないエクセルの初心者が、数式をいじるとロクなことがない。途中、ロジックがわからなくなったのか、無理やりベタ打ちしているセルなんかもあった。
どう向き合う?
こういうデータに遭遇したら、まず、「自分の不運を受け入れる」しかない。次に、「前任者のマネをする」もしくは「地道に修正作業をする」のいずれかを選択する。
前任者のマネをする
前任者同様、対処療法で乗り切る。そのときにかかる時間は一番短い。ただし、そういったことが繰り返されると、自分で変更したことですら忘れたりしてしまう。後から思い出すのにも時間がかかるので、本当に速いのか疑問。
地道に修正作業をする
ナントカモデルとか対象がすでに私には理解出来ない金融機関などのエクセルだと難しいのだろうが、一般的な事務作業で扱うデータなんてたかがしれている。大部分は基本的なエクセルのルールと、数式で解決可能。
職場で作るデータは、会社に帰属する。時間に追われるとどうしても「自分がわかればいい」となりがちだが、共有財産であるという意識を持って、時間はかかってもいつ担当替えがあっても大丈夫な状態を作る努力をする。
修正の前(後)のチェックポイント
以下、シートの内部の細かな修正というよりは、エクセルの作法に関する最低限のチェックポイント。整理整頓するだけでも、複雑さが緩和される、気がする。
- データの入力シートが1つにまとまっているか。(→データ入力用シートがどうしても複数になってしまうなら、入力用シートと分かるよう色分けをするなどして対応する。)
- 複数のブックにリンクを貼っている場合、それらのリンクされているブックが1つのフォルダで管理されているか。(ブックは必ずフォルダ単位で更新する。「一方のファイルだけ更新」→「新しい名前を付けて保存」といったことを繰り返し、フォルダ内を混沌とさせない。)
- いらないファイルが削除されているか。(やり直しの指示に備えて古いバージョンを取っておいて、結局、最終版を探すのに時間がかかるようになってしまうのでは本末転倒。)
- 複数のファイルを使う場合、ファイルの相関図が作成されているか。(全体像把握のために作った図を最後に清書して、後任者の為に保存しておくこと。)
関数のおさらい
シート内部の修正をするにはどうしても関数が必要となる。以下の関数くらいは覚えておいた方がいい。
- IF関数(IFERROR関数)
- VLOOKUP・HLOOKUP関数
- DATE関数(DATEDIF関数)
- SUMIF関数
同じ列の他の行には数式が入っているのに、突然99行目で1つのセルだけ《値のベタ打ち》なんてこと、ダメ、絶対。そういうときにはIF関数が役に立つ。ただし、ネストのしすぎには注意。
IFERRORはカッコにしたけど、私も(そして上司も)エラーが表示されていると気になってしまうタイプなので、個人的には必須。
あまり注目されていない関数かもしれないが、個人的に大好きなのは、SUMPRODUCT関数。PRODUCTというとおり、積を返す数式なのだけど、それを利用して複数条件にあったデータの抽出が可能。INDERECT・MATCHなんかよりこれを覚えておいた方が、個人的には為になると思う。
属人化が普通なコーポレートカルチャー
長年、属人化をOKとしてきた会社においては、訳の分からないエクセルが生み出される土壌が出来上がっているような気がする。
私がこれまで勤務してきた会社では、基本的に、自分の業務の引継書的な文書を毎回のように作らされた。やっていたときは、「資料作りの方が時間長いんじゃ・・・」とぼやいたりしたこともあったけど、圧倒的に仕事の引き継ぎがスムーズで、トータルで見たときには非常に効率的だったように思う。
どう向き合う?
まず、「声高に、みんなで変えていこう、などとは決して言わない」。そして「既存のカルチャーを受け入れる」もしくは「静かに自分の業務の見える化を進める」のいずれかを選択する。
既存のカルチャーを受け入れる
所属する組織の和を乱す必要はない。また、巷には属人化している方が効率的だ、という意見もある。
静かに自分の業務の見える化を進める
「こういうカルチャーだから」と受け入れつつも、業務の現状フローをまとめた上で、問題の仮説検証という作業にひっそり取り組む。今のような会社のカルチャーでは、同僚たちは《属人化している業務の見える化》を、すぐに《自分の業務・存在意義の消滅》的な方向で変換しがちなため注意が必要なのだ。
ただし、業務効率化と言われまくっている上司たちには概ね好意的に受け取ってもらえるので、ひっそりであろうとエクセルの改善に取り組む価値はそれなりにあると思う。
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