【Excel】難しい数式や機能を覚えるよりも先に学ぶべきこと

金曜日に同僚から「過去のレポートに誤りがあり、どう修正したらいいか相談させてほしい」とのメールが送られてきた。すぐに、過去のエクセルレポートの問題の箇所を再確認。残念ながら、同僚の勘違いではなかった。すでに3ヶ月。先月もその前の月も、そのミスを引きずった報告をしていたことになる。

とりあえず、誤りの発生源は分かったが、他のデータへの影響範囲を調べた上で、修正案をいくつか考える必要がある。そこで、同僚にヒアリングをし、エクセルの数式を一つずつ見直し、可能な修正方法を練った。

今回の件で、共同作業するにはお粗末なエクセルの作法の知識しか持っていない、と改めて痛感。これまで自己流で何とかエクセル業務を遂行してきた人は、自己流を貫こうとするから、仕事はチームワークということを今一度心に刻み込んでほしい。

エクセルシートについての説明はあったのに

今回の問題は引継ぎの過程で発生した問題だった。 一般的にあるエクセル引継ぎ問題は、シートの構成やインプットセルとアウトプットセルの混在などにより引き起こされるものが多い。私も、転職して、あまりのとっちらかったエクセルファイルの数に数ヶ月頭を悩まされた1

では、今回の場合もやはりファイルに関する説明不足から引き起こされた問題だったのだろうか。答えはノー

当該エクセルファイルは本社から配布されたもので、思いつきで作られたようなものとは対極にあるようなファイル。間違いの発生を抑えるべくシートの保護なども設定されている自由度の低い作りとなっている。そして、使い方のマニュアルが別途作成され、常に最新版がイントラ上にアップロードされている。

そして、そのマニュアルには「○○には必ず☓☓と表示されなければならない」と明記されている。

今回のミスは、同僚がこの注意書きを読み落としてしまったのが原因の一つ。この点、同僚に責任はある。しかし、この○○にあたる箇所は、どの行に表れるか定まっておらず、同僚をかばうわけではないが、見落としやすいチェック方法なのだ。

ちょっとした改善案:判定セルは固定

前の会社は、こういうエクセルファイルの作り方が(今の会社と比較して)上手かったと思う。確認すべきポイントがどこあろうとも、判定セルを一番上に再掲し、【提出可】と表示されない限り提出ができなかった2

判定セルを右端に置くと、データ量によってスクロールしないと気付かないなどといったことがあるので、A1セル左端に設置するのがいいと個人的には思う。

更に言えば、担当者は、スクロールせずに全体を見ることがきる場合を除き、環境保護・経費削減などというスローガンに怯むことなく、堂々と印刷してデータを確認、シュレッダー送りにすることをやってのけるべきだ。

私の周りはみんな《非表示》が好き過ぎる

閑話休題。

今回、同僚が注意書きを見落とししてしまったということ以上に問題だったのは、前任者がデータ行を非表示にしていたことだ。

確かに、判定セルの見落としはあったが、全てのデータは証憑と突合されていた。上手く説明できないのだけれど、いくら証憑と突合しても今回の問題は起こりうる。だからこそ、判定セルがついているというわけだ3

今回の非表示は前任者が残したものだったけれど、同様ミスを防ぐため、同僚には、今後エクセルでの作業時には「非表示ではなく、グループ化」を使うように伝えた。

今の会社に入ってから特に思うのだけれど、地域本社を含め、私がよく仕事をする事務所の人達はエクセルの《非表示》機能をよく使う。これは、行列の非表示に限ったことではなく、シートの非表示も含む4

同じ会社でも文化が違う

本社とのやり取りではこんなことを思うことはない。なぜだろう。

勝手な想像だけど、彼らはもっと共同作業に慣れているのかもしれない。彼らから送られてくるエクセルファイルは、非常にシンプルなテーブル形式のものだったり、複雑な場合には保護機能で簡単に変更できないようにされている(もちろんマニュアル付き)。

一方で、地域本社以下では、というと残念ながらそんな意識は浸透していない。エクセルファイルを引き継いだら「数式を追って全体像を理解するのが当たり前」という空気が充満している。

この文化の違いは、ナレッジマネジメントに対する意識の違いから生じているのではないかと思う。

今の会社に転職して長くはないのと、やり取りしている部署が限定されているので、全体に当てはまるのか微妙だけど、意識の差が生まれた背景には、関わる人の多さと、流動性があるのではないかと推測する。

【1】日頃からいろんなバックグラウンドを持つ人たちを相手にしている

本社は、同じフロアで顔を合わせる人たちだけでなく、国内外の他の事務所とやり取りをしているから、常に、作業者が悩むポイントがないような作りを意識してファイルを作る文化が出来上がっているのではないかと思う。

【2】スタッフのローテーションのスピードが速い

地域本社以下、私が関わっている事務所のスタッフは、ほとんど異動がない。一方で、上司曰く、本社では、最近特に、ローテーションの感覚が短くなってきているのだという。若手にいろんな部署で経験を積ませて、少しでも効率よくスキルを付けさせようとしているらしい。 このため、短い期間での業務引継ぎが必要であり、マニュアルなどが整備されていたり、引継ぎやすい形のファイルが作られる素地が出来上がっているのだと思う。

「仕事で使うエクセルは全て共有物だ」という意識を持つべき

《効率化》というのは、私の会社でもよく聞く単語だ。本社では、前述のような環境の中でも効率的に業務を遂行するためにも、ナレッジマネジメントの重要性がより浸透しているたのだと思う。一方で、同じ会社なのに、残念ながら、私の周りでは《暗黙知》→《形式知》への変換の重要性は理解されていない(少なくてもエクセルについては)。

決して特別なことが要求されるわけじゃないのにどうしてだろう。以下の2つを実践するだけでも改善されるハズ。

新しくファイルを作ったら簡単な説明を付けておく

会社のPCで作るエクセルファイルは、例えそれが個人の OneDrive に保存されているものだろうと、説明のシートを一つ挟んで置けばいいのだ5。場合によっては面倒くさくても、別途マニュアルを作るべきなものもあるけど。

確かに、近視眼的な視座では、こういう作業は自分の仕事のスピードを落とすし、効率的には思えないかもしれない。でも、仕事はチームワーク。

以前、簡単な業務だしと私がやっていた業務を、突然上司からの指示で同僚に渡したことがある。シートに、データの出所やシートの構成について全部メモっていたので、引継ぎが超楽だった。

不要なヘンテコな機能は使わない

行列の非表示、シートの非表示、列の結合(エクセル方眼紙)などなど、考えなしに使わない。「絶対使うな」というわけではなく、大した理由もなく自分の好みで使うなというはなし。引き継いだ人間や作業者にとっては、結構な負担。複雑であればあるほどやる気が出るのはゲームくらいで、意味なく仕事には持ち込んじゃダメ、絶対。

私がお世話になった本3冊

エクセルの数式などの辞典も持っているが、エクセルで出来ることを紹介する本よりも好きなのが、エクセルのお作法を取り扱った本。3冊以外にもまだまだ同じような本を持っている。

「エクセルを使えるようになりたい」と真剣に考える人ほど、この系の本は選ばないかもしれない。でも、SUM関数のような超基本をおさえたら、一旦、数式などを覚えるのを休んで、お作法の本を一冊読んでみるのが良いと思う。それから、機能や関数を扱った教本とお作法の本を行ったり来たりすればいい。そうじゃないと、他人を悩ますエクセルが量産され続けてしまう。

さて、お作法関連の本で私が一番最初に買った本は、慎泰俊さんの『外資系金融のEXCEL作成術―表の見せ方&財務モデルの組み方』。

留学時代、ファイナンスのイロハもわからなかったときに、手にした『15歳からのファイナンス理論入門』がわかりやすく、当時よくブログも読んでいた6

ちょっと逸れるけど、ご参考まで:

『外資系金融のEXCEL作成術―表の見せ方&財務モデルの組み方』を買って、それまで作ってきた表がいかに自分勝手な汚い表だったかを認識。この本で紹介されているスタイルを覚えるまで、この本を何度も何度も見ながら表を作った。財務モデルを作る業務はないため、後半は参考となる部分が前半ほどではなかったけど、私にとっては自分のエクセル資料に対する認識を変えてくれた重要な一冊。

次に買ったのは、熊野整さんの『外資系投資銀行のエクセル仕事術』。

この本は、『外資系金融のEXCEL作成術―表の見せ方&財務モデルの組み方』よりもエクセルの作法についての説明が詳しい。表の作り方についてのルールがやや違ったりもする。この本で、非表示機能よりグループ化機能を使うことが勧められている。ショートカットなど普通のエクセル機能については、全て知っているものばかりだったが、反対に「基本が身についている」との安心感をもらうことができた。

そして、『迷惑をかけないEXCEL』。

自分への戒めのために、時々、読み返している7。「あー、こういうことが他人には迷惑になるのか」とか「わかる!これやられて相当苦労した」ということがたくさん載っている。全てをクリアすることは難しいのだけど、ファイルを時々見直して、直せると思えるところが出てきたら少しでも改善している。

最初の2冊は、外資系とある。外資系の場合、やはり従業員のバックグラウンドに多様性があるため、必然的に、わかりやすいエクセル資料を作るルールが確立されたのではないかと思う。

Amazonのレビューでは、エクセルのお作法の本は賛否両論8。お金の無駄という人もいる。そういう人たちは、エクセルのお作法がきちんと確立されている会社で働いている数少ない幸運な人たちなんだろう。心底羨ましい。


  1. 外部ファイルからのリンクがあるが、関連するファイルが一つのフォルダにまとめられているわけではなく数日間に渡る大捜索作戦を結構する羽目になったり、命名規則がハチャメチャ過ぎて、必要なファイルを見落としそうになったり。それらが全て人事評価とそれに基づくボーナス算定などに関連するファイルだったため、相当神経すり減らすことになった、という非常にビターな思い出。 ↩︎
  2. 無視してアップロードしても、エラーとなり、受け付けてもらえなかった、・・・と思う、確か。 ↩︎
  3. 厳しいことを言えば、レポートそ印刷後、電卓を叩いてダブルチェックしたら一発でわかる。 ↩︎
  4. 以前、シート数・データ量の割に重いファイルだな、と思って、非表示シートを調べたら15枚以上も非表示のシートを見つけたこともある。 ↩︎
  5. 非常にシンプルでアフォーダブルな資料の場合は除外。 ↩︎
  6. もちろん、実際のファイナンスの授業では、いろんな論文やケーススタディに取り組まなくちゃいけなかったけど、知識ゼロから入るのとは雲泥の差だった。非常に説明がわかりやすい。 ↩︎
  7. 人って忘れやすい生き物なので、読んでからしばらくすると自分勝手なエクセルファイルを作り出したりする。 ↩︎
  8. パワポの本だと使い方よりもお作法の本の方が人気な感じがする。 ↩︎
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